―――ゲームセット ウォンバイ 越前リョーマ 6−4!

勝者を告げる審判の声が静かに響いて、割れんばかりの歓声がテニスコートを包んだ。

君が、みんなが、追いかけてきた夢が叶った瞬間。


青学、全国制覇。


涙があふれて、止まらない。
勝利を掴んだリョーマを、夢を叶えた青学のみんなの姿を、しっかりとこの目に焼き付けておきたいのに。
あふれ出る涙に滲んでしまう。

英二先輩に飛びつかれて、桃先輩に頭をグシャグシャとなでられて。
コートに駆け寄った先輩たちに囲まれて、宙を舞う。
頭を小突きまわされて、暖かいことばをかけられて。
本当はうれしいくせに、ちょっぴり迷惑そうな顔をして。
握手を求められた年上のライバルに、いつもの不敵な笑顔で応える。

生意気なスーパールーキー。

そんな後ろ姿をみながら、これまでの数ヶ月のことが走馬灯のように頭の中を駆け巡っていた。
自信たっぷりの言動。
不敵な笑顔。
低くて甘い声。
負けず嫌いな横顔。
ボールを追いかける姿。
小さな身体から繰り出される渾身のドライブ。
夢を見据える強い、瞳。

そのすべてに目を奪われて、止められなくて。
恋焦がれて。

リョーマの背中を必死で追いかけた。

それはきっと、この瞬間を見届けるため。

「ありがとう」と「だいすき」を何度言っても伝えきれないほど
この胸にあふれる想い。

大きな夢を見せてくれた君に。
出会えた奇跡に。

本当ににありがとう。



コートの中では表彰式が始まって。
手塚部長が優勝旗を受け取る。
日本一の証。

その瞬間。
リョーマは空を仰いでいた。
まっすぐに前を見据える、大きな瞳で。

あぁ、そっか。
きっと
リョーマはもう、次の目指す場所を見据えているんだ。


 ―――まだまだだね。

 ―――俺はもっと上に行くよ。


小さくて大きな背中から、そんなリョーマの声が聞こえたような気がした。

立ち止まってなんかいられないんだね。
まだまだ終わりなんかじゃないんだね。
君には目指す場所があるから。


だったら、ついていくよ。
いつまでも。
どこまでだって。
その背中を追いかける。


だから。
連れて行って。
その瞳に映る世界へ。

君の目指す高みへと―――。




Dear my Prince Ryoma.
Forever Love...



2008.03.03