大好きなあなたの誕生日にはいちばんに「おめでとう」を伝えたい。


  ―Snow White


身体の芯まで凍えてしまいそうな冬の夜。
当たり前のように外は極寒。
それでもそこに立っているあたしの心はあったかい。
だいすきなきみに会いに深夜の訪問。
あたしを見つけた瞬間の彼の驚く顔を想像しながら腕時計に目をやる。
カチッカチッと動く時計の針を目で追いながら、てっぺんで重なるまでのカウントダウン。


12月24日 深夜0:00。


愛しい人がひとつ年を重ねた瞬間。
かじかむ手に握り締めていたケータイにスタンバイしていた短縮の通話ボタンを押す。
耳元で鳴り響くコール音。
あたらしく年を重ねたきみの第一声を想像してドキドキが高まる。


1コール、
2コール、
3コール。

「・・・もしもし。」

「リョーマ、誕生日おめでとうっ!!」

「・・え・・・あぁ。ありがと。」

突然の電話に少し驚いたようなリョーマの声。
だけど、ほんとのサプライズはこれから。

「ねぇ、部屋の窓開けてみて?」
「はぁ?なにイキナリ。」
「いいからはやく!」
「・・んだよ・・・。
   ・・・っ!?」

ガラリと開いた2階の窓からリョーマの顔がのぞいたかと思うと。
もともと大きな目をさらに見開いて、電話越しと同時に辺りに声が響いた。

「・・っ!!?」

「来ちゃった。」
へへへっと笑いながらリョーマを見上げる。
予想以上の反応。
それくらい驚いてくれなきゃ、この寒い中ここまで来た意味がない。


「ちょっ・・。なっ・・・。
 あー、もうっ!!とりあえずすぐ行くから待ってて!!」

そう言うや否や窓からリョーマの姿が見えなくなり、
その代わりにあっという間に玄関のドアがバタンと開いてそこから勢いよくリョーマが飛び出してきた。

「ちょっと、何やってるわけ!?」
「リョーマに会いにきた。」
「会いに来たって・・・何時だと思ってんの。」
「夜中の12時。それにあわせて来たんだから。」
「・・・ひとりであぶないじゃん。こんなに冷たくなってるし。」
リョーマは両手で赤くなったあたしの頬を包んだ。

「だって・・・。リョーマにいちばんにおめでとうを言いたかったんだもん。」

誕生日を迎えた瞬間、誰よりも早く、いちばんにリョーマに伝えたかった。
年を重ねたいちばん最初のリョーマの声を聞きたかった。
新しく年を重ねたリョーマの姿をいちばんに見たかった。

「・・・ったく、もう。ここじゃ寒いし、とりあえず俺の部屋行こう?」

そう言ってあたしの手をひっぱったリョーマの耳が少し赤く染まっているように見えた。
まったく、素直じゃないんだから。
気づかれないようにクスっと笑って、リョーマの後を追う。
繋がれた右手から冷えた身体が少しずつ暖まっていくような気がした。

部屋に上がるとすぐにリョーマに抱きしめられた。
冷たくなった身体にリョーマの体温が心地いい。

「リョーマ。」
「ん?」
「ビックリした?」
「・・・した。」
「よかった。サプライズ大成功だ。」
「・・・なーにがサプライズだよ。もう夜中にひとりで出歩いちゃダメだから。」
「リョーマに会いにくるのでも?」
「だめ。だったら俺が会いに行く。」
「それじゃサプライズにならないよ。」
「サプライズなんてしなくていいよ。身体こんなに冷たくして。」
「大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃない。」
「リョーマあったかいもん。」

そう言うと、リョーマは少しだけ身体を離してあたしの顔を覗き込んだ。
さらさらな黒髪が顔に触れる。
シャンプーの香りがふわりと鼻を掠めた。

「もっとあっためてあげる・・・」

リョーマの顔が近づく。
唇と唇がふれる。
つめたかった唇があっという間に熱を持つ。

最初は触れただけだった唇が、深い口づけへと変わる。
噛みつかれるように口内を犯される。
息が苦しい。
ドクンドクンと激しい鼓動が心臓を打つ。
絶対0℃から100℃へと急激に温度が上がったみたいに、身体の奥が熱くなる。

あつい、あつい、キス。

「・・・んっ・・・」

苦しくなって息を漏らすと、唇が離れた。

「あったかくなった?」
「・・・ばか。」
「まだ足りない?」

耳元で囁かれれば、身体中がゾクリと音を立てる。

「じゃあ、もっと熱くしてあげる。」

肩を押され、ふたりしてベッドに倒れこんだ。
首筋に熱い唇が触れる。
熱に反応するかのように、肌に赤い花が咲いた。

「・・・んっ・・。」

服をはだけさせられて、リョーマのあったかい手が胸に触れる。
やわやわと包み込まれるように触れられて吐息が漏れる。
生暖かい唇と舌の感触を感じて身体の芯がじんじんと熱くなる。


「リョ・・・マ。」
「・・・ん?」
「プレゼント・・・ある・・よ。」
「あとでもらう。」
「ケーキも・・持ってき・・た。」
「先にアンタを食べてから。」
「・・・っ・・。」

胸の辺りでやわやわと動いていた右手が下半身へと伸びて、一番敏感な場所に触れる。
腰がピクリと動いたのが自分でもわかった。

「・・・身体あんなに冷たかったのに、ここはもうこんなに熱いんだ。」

耳元で囁かれて、ナカをかき回される。
グチュッグチュッと卑猥な音が響く。
恥ずかしくて、だけど快感が身体中を支配していくようで。
何も考えられなくなる。
じんじんと身体中が疼く。涙が滲む。


「・・・ふっ・・・あっ・・・。」

ピチャッと突然襲われた舌の感触に、身体が跳ねる。
ナカで蠢く舌先と熱い息づかいに翻弄されて、どうにかなってしまいそうだ。

「すっげ、あまい・・・。俺、ケーキ食べる前に満足しそう・・・。」

リョーマの声が霞むように聴こえる。
もう、限界が近い。

「リョ・・マ・・・。もう・・・イく・・・。」

「まだダメ。誕生日なんだから、俺も気持ちよくさせてよ。」

リョーマはニヤっと笑い
身に付けていたものを手早く脱ぎ捨て、一気にあたしを貫いた。

「あっ・・・んっ・・・あっ・・・ふっ・・あ・・・」

腰の動きに合わせて漏れる声。
繋がっている場所から響く水音。
リョーマの吐息。
抱きしめられた身体から伝わる体温。
ぞくぞくと襲ってくる甘い痺れ。

身体中がアツイ。

「・・・のナカ・・・熱い・・・。」

耳元で囁かれれば、身体が反応する。
グチャグチャとかき回されて、意識が飛びそうになる。

「んっ・・リョ・・・マ・・・。も・・・ダメ・・・。」
「・・っ・・。いいよ・・。イッて・・・?俺も・・・も・・・。」

腰の動きが速くなる。
薄く開いた瞳に、切なげに歪んだリョーマの顔が映る。
甘く苦しい痺れととも愛しさが全身を駆け巡る。
大好きなひとの誕生日を祝えるしあわせを感じながら、
リョーマと一緒にふわりと真っ白な世界へと放り出された。





、外見てっ!!」
指先で掬ったケーキを舐めていたリョーマが、突然窓の外を指差しながら叫んだ。

「・・・雪だ。」
「え・・・。ほんとだ・・・。」

毛布に包まったまま身体を起こすと、窓の外にふわふわと舞う白い雪。
真っ暗な空間の中舞い落ちるそれは、まるで花びらのように綺麗で。
触れるとつめたいのに、あったかく見えるのはどうしてだろう。

「このまま降ったら、朝には積もってるかな?」
「積もるんじゃない?」
「・・・ホワイトクリスマスだね。」

リョーマの肩に毛布をかけて、微笑む。

「あ、ちがった。リョーマの誕生日だから、

   ・・・ホワイトバースデーだね。」


ふわふわと舞い落ちる、真っ白な雪。
隣に感じる大好きなひとの温度。


来年も。
再来年も、その次も、その次だって。
あなたの誕生日にはいちばんに「おめでとう」を言える距離にいられますように。


舞い散る雪に願いを込めて―――。


Happy Birthday.





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2007.12.24