月の綺麗な日には そっと夜を抜け出して君に会いに行こう。
― Tone
冷たい夜風が頬をなでる。
耳を澄ませばどこからともなく虫の鳴く声。
少し前までは寝苦しい夜が続いていたのに、いつの間にかすっかり秋の気配だ。
空を仰げば、金色に輝くまんまるな月がぽっかりと浮かんでいる。
今夜は十五夜。
真っ暗なはずの夜に眩いぐらいの月明かりが俺の歩く道を照らしてくれる。
突然会いに来た俺に、あんたはどんな反応をする?
きっと目をまんまるにして驚いて、そのあとすぐに満面の笑顔を見せてくれるんだろう。
想像するだけではやる気持ち。
静かな夜道に俺の足音が響いて
歌うように奏でるそれは、まるで高鳴った俺の鼓動と共鳴しているみたいだ。
早く、はやく。
一分でも早く君に会いたい。
「・・・リョーマ?」
頭の中が君で埋め尽くされて、ついに幻聴まで聞こえてくる始末
「リョーマっ。」
えっ・・・・・・?
これは幻聴なんかじゃない・・・・。
「・・・っ。」
しっかりと前を見据えると
暗闇の中、月明かりに照らされて浮かぶ君の姿。
「なんでっ・・?」
「それはこっちのセリフだよ。」
「えっ・・・だって・・・なんでがこんなところに・・?」
驚きのあまり気が動転して、うまく言葉を紡げない。
驚かすのは俺の方だったはずなのに。
どうして、君がここに・・・?
「お月様が綺麗だったから、リョーマに会いたくなったの。」
俺に・・・会いにきてくれた・・・?
あの月を見て、俺に・・・。
同じ月を見て、同じこと考えて・・・。
たまらなくなった俺は、彼女の手をぐっと引き寄せ
身体ごとギュッと抱きしめた。
「俺も・・・、会いたくて。」
「リョーマ・・・。」
彼女はそっと俺の胸に顔を埋めた。
「リョーマの心臓、ドキドキ言ってる。」
「あんただって。」
「だって早く会いたいって思って歩いてたら、いきなり目の前にリョーマが現れるんだもん。」
そう言って笑うは、月の光に照らされて俺が想像していた以上に綺麗だ。
「つーか、こんな時間にひとりで出歩くなんて危ない。」
「だって・・・どうしてもリョーマに会いたくて・・・。」
そんなかわいいこと言われたら、我慢できないよ?
だって、今宵は満月。
「・・・ったく。知ってる?満月の夜、男は狼になるんだよ。」
「狼・・・?」
「そう。こんな風にね・・・」
そう言って、ニヤリと笑うと
の唇にそっとキスを落とした。
「リョーマ・・・」
「まだ・・・足りない。
今夜は寝かせないよ?」
月明かりが二人を照らす。
今宵、僕らの行方はあの満月だけが知っている。
fin...
* * * * * * * * *
十五夜記念小説!
今日の帰宅途中、月があまりに綺麗でふと思いついたお話です。
せっかくの十五夜なので今日中にどうしてもアップしたくて慌てて書き上げたのでグダグダですが・・・。
しかもあんまりリョーマっぽくないですね・・・。
読んでいただきありがとうございました。
2007.09.25